東北大学大学院 工学研究科 小野 崇人
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 江刺 正喜
1.はじめに
本稿では東北大学で進めている「マイクロシステム融合研究開発拠点」1) に関して、その研究開発の狙いや組織、運営について紹介する。この「マイクロシステム融合開発拠点」では、マイクロシステムと最新のLSI とを一体化した新しい融合マイクロシステムを開発し、この分野の人材を育てると同時に国内産業の国際競争力向上にも貢献することを目的としている。MEMS は、携帯端末やコンピューター、ディスプレイなど多くの機器に入っているセンサやデバイスに用いられている。競争も激しい分野であり、LSI を集積化させて、より高度な機能を持たせることが、国際競争力を高めるためにも重要であると考えられている。
一方、技術の高度化に伴い、複数の企業がお互いの強みを持ち寄る水平分業的な開発が求められており、大学の拠点を通した産産学連携がこのたための研究開発の一つのモデルとして機能している。LSI-MEMS の開発においては、LSI を外注で作ってもらうのに大変な費用がかかるため、一つのウエハに複数の企業や研究グループのLSI を乗合させる、いわゆる“乗合ウエハシステム”を運営している。これにより融合マイクロシステムの研究開発コストを低く抑えることができる。また、大学と複数の企業の共同研究を円滑に進めるための基盤特許の取り扱い方などを制定した。現在、図1 に示すように、東北大学の複数部局に属する様々な研究者が参加すると同時に、業種や企業規模が異なる16 社の企業も参画し、融合マイクロシステムとその応用システムの開発を進めている。融合マイクロシステム技術の概要や拠点のねらいと現状について以下に概説する。
図1 「マイクロシステム融合開発拠点」プロジェクトの概要